住まいの環境研究所理事長 上郡 清政
ご挨拶
コロナウイルス第6波のオミクロン株の急拡大に関して、東京都は2022年1月14日、その約半数が家庭内感染と発表。この状況を裏返せば、各家庭の住環境の不備を表したものですね。特に換気。
そこで国立病院機構仙台医療センターウイルスセンター長、西村秀一氏は著書『もうだまされない新型コロナの大誤解』の中で『コロナウイルスは空気感染』と明言され、さらに「ウイルスは細菌と違い、手指から感染しない。手洗いよりうがい、換気を徹底する」とあります。ならば各家庭の換気を整えれば家庭内感染は防げるはず。
私は連日のコロナ報道について不可解に思うことがあります。専門家を始め、その報道には具体的な対応策が述べられていないことです。換気については「窓を開けて換気してください」の一点張り。中には「1時間に2回換気をしてください。1回につき、約数分間窓を開けてください」などもあることはあります。けれどその対処で、私の素朴な質問です。例えば就寝中の換気はどうなのでしょうか? そしてこの方式で家庭内感染が防げるのでしょうか?
このように今、具体的な対応策が示されないことに対して、多くの人がイラつきを覚えているのではないでしょうか?
先ほどの「1時間に2回換気をしてください。1回につき、約数分間窓を開けてください」の換気対応は、ある都道府県のHPに掲載されていたもの。大変失礼ですが、行政がこの対応ですから、これでは大きくコロナ状況が変わることはないでしょうね。今回ワクチンでコロナを抑え込んだとしても、次の試練の場合、またしても同じ対応策を取るのでしょうか?
まずは病気になりやすい原因を減らし、最後の砦である己の治癒力を高める。つまり己の免疫力を維持向上できる住環境づくりが大事だと私は思うのです。そして、そのために必要な住環境の基礎知識を身につけることが、何より大事だと思うのですが。
『換気』
「窓を開けて、室内空気を入れ換えてください」と言われます。けれど寒い冬など、正直どのぐらいの時間窓を開けていられるでしょうか?
私は20年前より家には、まず換気が大事だと考えていました。なぜなら、外気の暑さ寒さから身を護るための器が家なのですから。窓・壁などで仕切られた家と言う器。その器内の空気環境が大事だと考えたのです。
そこで私は早い時期から換気の専門家を招き『換気』を学びました。それは全室に24時間換気の備え。しかも第一種熱交換型換気装置の奨めでした。
それを備えた結果、うれしい効果が目の前に幾つも現れたのです。そのひとつに「一冬に二度は風邪を引き、医者に行っていたのですが、この家に住みかけて一度も風邪をひいていません。それでもある日、長男がインフルエンザにかかりました。でも長男が、その部屋に留まってくれたお陰で家族への感染はありませんでした。」などがあります。そう言えば私たち夫婦も入居して20年目ですが、一度も風邪をひいていません。
その長男さんの部屋には排気口を備えています。病気になりやすい原因を排除する策です。
この換気方式は、風邪からインフルエンザ。そして今のコロナウイルスにも大きく役立ってくれています。
また、それ以外にもアレルギー・アトピー・鼻炎・ぜんそく・花粉症などの原因になりやすいカビ・ダニの粉塵なども排気してくれます。シックハウス、次の公害といわれる香害に対しても対応できます。さらに湿気の排除など、換気は住宅にとって第一に考えねばならぬ、とっても大事な装置なのです。あなたも換気の重要性を学んでください。『換気』で救われる病気が多くありますよ。
『温度』
暖房した暖かい部屋から飛び出せば、廊下から寒さがある。今も、このような家がほとんどではないでしょうか。さらに廊下、トイレ、洗面、脱衣所、風呂場も寒い。
そこで知恵です。せっかく部屋を暖めた熱が逃げなければ、捨てられにくいようにすれば、暑さ寒さはどう変わるでしょうか?
そこにある熱を長くそこに留まらせ、うまく使っていく。この考え方、残念ですが今も日本にほとんど無いですね。暖かさ涼しさは冷暖房器具から直接的なもの・・・と思っている人ばかり。
家全体で熱を抱え蓄え、熱を放しにくい熱効率の良い家にすればいいのです。
すると家中に温度差が少ない、少ない冷暖房器具で夏涼しく、冬暖かく過ごせる家が確立できるのです。
地中には冬場、カエル・蛇が冬眠できる熱があります。さらにそこに夏場の熱も蓄え、寒さ対策に利用するのです。そしてその熱を基礎から屋根裏まで蓄える策を取るのです。すると少ない冷暖房器具で、しかも自然的な輻射熱による暖かさ涼しさ、これまで経験のない快適な住環境が手に入るのです。
さらにその熱は基礎部分、つまり床下にも蓄えていますから、「足元が冷えない家」になります。
足元が冷えなければ、室温少々低目でも寒さを感じず十分暮らせます。とっても動きやすい家になります。動けば新陳代謝が良くなり自己免疫力も上げられます。すると病気になりにくい状況なります。薬に頼り切る暮らしより、薬に頼り切らない暮らしの方がいいと思うのですが。
このような家だと、ちなみに深夜のトイレも、赤ちゃんのお世話も、介護も、朝の着替えさえ全く寒さの抵抗がない、とっても全住人が助かる空間になります。暑さ寒さのストレスの少ない家。またそこに音対策を加えれば、家族全員のプライベートが保て、癒され楽しめる空間がつくり出せます。・・・このような暮らし、これからの時代、必要ではないでしょうか。
『湿度』
日本は四季が有り、湿気の国です。そこで問題は結露対策。いい家とは結露しにくい家です。
結露は健康から耐久性までいろんな部門に深く関わっています。そこで大事なのが室内湿度60%以下の家づくり。これだとカビ・ダニの繁殖は起きません。今日のアレルギー・アトピー・鼻炎・ぜんそく・花粉症などの多さは、湿度が大きく災いしているのです。
室内湿度60%以下だと、これまでの日本住宅では見られなかった好結果が次々を現れます。
まず家を構成している構造物に腐りが起きません。高い耐久性が得られます。資産価値の高い家になります。
雑菌の繁殖が少ないため家の汚れも少ないのです。これだけでも主婦業が大きく軽減され、年中洗濯物の室内干しが可能。黄砂、PM2,5、花粉などの天候に支配されない洗濯物干しが可能です。鼻炎・花粉症の人などは大いに助かりますね。
また押入れにスノコ・除湿器など要りません。着物に黄ばみ・シミなど来ません。米びつに虫がわかないです。人について入ってきたハエ・蚊などもミイラ化してしまいます。それらの結果、社会的問題である食物アレルギーを大きく抑えることも叶うのです。
『日本初! 木の新しい使い方の提唱』
山が荒れています。今も木の使用方法はほとんどが柱・板・燃料など。私は20年前より、それ以外の他の使用方法がないものかと探り続けて来ました。
毎日取り続けた家全体の温湿度データーから、ある日ふと気づいたのが、木を乾燥状態に保てば木の特性が活かせるのではないかと思ったのです。事実、木を乾燥させれば、『蓄温・調湿作用』が出て来る。つまり木を健康素材として使えることを見つけ出せたのです。
ところで近年の住宅は、ほとんどが高気密高断熱。ならば、その特徴を利用して木の特性を盛り込めばいいと思ったのです。高気密高断熱住宅だけに基礎から屋根裏までを一つの部屋と捉える。そして試行錯誤を繰り返すと、次から次へと素晴らしい住環境の仕掛・仕組み方法が現れたのです。
その第一は換気の高効率化が達成できたこと。二番目が温度であり、今までの家では無かった家全体で、今そこにある熱を長く蓄えられる仕掛け。さらに自然的な熱を取り込み長く温存する策も叶いました。
また住宅の究極の目標は湿気対策。湿気の国日本にあって、湿度に住環境が振り回されない家をつくり出すことができたのです。
つまり日本特有の気候風土に似合った工法を採用し、そして木の特性をうまく使い切ること。これが住宅のあり方を根底から大きく覆すことになったのです。しかも少ない冷暖房器具、つまり省エネでそれらが達成できるのです。原因を減らし、自然的な仕組みで良好な住環境を構築する。それらにより病気も大きく減らすことができました。
更なる発見は、木を多く使うほど家の性能・品質が良くなり、住み心地さえも良くなることでした。宮大工は言います。「地元で育った木が、何よりも地元に似合っている。」この考え方には沿いたいですね。地元の職人さんにより、地元に最も似合った家を建てていく。さらに伝統技術をも引き継いでいく。
家の形は従来型でもいいし、丸い形から三角など、どのような形でもいいのです。また使う木は、太い木から、自然木をそのまま使うとか、個性あふれる楽しい家づくりを行えばいいのです。ただし住人を救い護るという家の性能・品質だけは外してはいけません。そして子から孫へと長く使い継がれていく資産価値の高い家をつくるのです。
すると、今国民の半数以上がアレルギーと言われているアレルギー問題を抑え、さらに食物アレルギーの抑え込みもできます。
人それぞれが個性豊かに暮らす。それに必要なのが基本的な住環境の備えと、そこに必要な基本的な住環境の知識です。
以上これらはSDGsの17項目の幾つかに匹敵し、そしてそれは都市一極集中から地方分散。地方創生、雇用、少子化、高齢者、医療費問題などに大きく貢献し、一般住宅から市営住宅。そして小中学校などの公共施設にも使えるのです。さらに温暖化、省エネ、脱炭素など、今世界が抱える問題解決に繋がるだろうと思います。